
電通 株式会社の企業分析レポートです。
「広告代理店について知りたい」、「仕事内容はなんとなく想像つくけど、儲かっているのかな」。このような悩みを持っている皆様にお届けします。本記事では、損益計算書(以下P/L)、貸借対照表(以下B/S)、キャッシュフロー計算書(以下C/F)の数字を見ながら、株式会社電通の企業分析をしました。
目次
5分でわかる企業分析レポート 電通 | 面接とかに役立つよ

本記事では、P/L、B/S、C/Fから株式会社電通をサクッと紹介します。本記事で使用している財務データは以下の資料のものです。
- 株式会社 電通 2018年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 株式会社 電通 2017年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 株式会社 電通 平成28年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 株式会社 電通 平成27年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
P/Lから読み解く電通 | 売上総利益率がえぐい
ここでは、P/Lの数字から本業で稼ぐ力を見ていきます。
驚異的な売上総利益
2018年12月期の収益は約1兆185億円。そして売上総利益は約9,327億円。驚異的な数字です。グラフを見ただけで広告代理店ビジネスが儲かるということが分かります。営業利益は約1,126憶円。オペレーションの効率化などの企業努力でさらに儲けがでる体制になる可能性がありますね。
売上総利益率と売上高営業利益率はどちらも良い
2018年12月期の売上総利益率は91.57%。凄まじいですね。よく言われるのが「広告代理店の粗利(売上総利益)が良いのは単純に元手が必要ないから」という意見です。これに対してはその通りなのですが、元手が必要ない取引をこれだけのビッグビジネスに成長させた点は紛れもない実力だと言えます。つまりビジネスとして非常に素晴らしいです。
売上高営業利益率は11.06%。ここ2年で下降傾向です。この理由について2018年度決算説明会資料では「新しい成長フェーズのための、グループの企業基盤整備と国内の労働環境改革への費用投下」と説明しています。従業員の労働環境は改善されていることが財務データからも見受けられます。オペレーティングのコストの上昇をどのように解釈するかは人それぞれですが、もし仮に電通の一員として働くことを想定した場合、業務効率の向上は確実に利益に直結する環境であることは間違いないと言えます。
B/Sから読み解く電通 | のれんに注目すべし
さて、次はB/Sの数字から電通の企業としての安全性を見てみましょう。
まずはB/Sの主要な数字を確認
それでは各数字を使って電通の企業としての安全性を見ていきましょう。
自己資本比率
自己資本比率とは総資本に対する自己資本の比率
ここでの自己資本比率は、以下の計算式で算出されています。
自己資本比率=親会社の所有者に帰属する持分合計/(資本+流動負債+非流動負債)
諸説ありますが30%から40%が安全である目安と言われています。したがって、直近の自己資本比率28.79%は危ういです。
流動比率
流動比率とは、流動負債に対する流動資産の比率。企業の一年以内の債務返済能力を測る指標
ここでの流動比率は、以下の計算式で算出されています。
流動比率=流動資産/非流動資産*100
流動比率が100%を超えていれば安全と言われています。したがって直近の108.40%は安全といえます。しかしながら流動比率の推移を見てみると基準の100%に近い状態が続いています。この理由はのれんの額が大きいことにあります。電通はここ数年、海外企業のM&A(企業買収)に積極的です。その結果がB/Sの数字に表れています。
固定長期適合率
固定長期適合率とは、返済を必要としない資金に対する固定資産に使われている資金の比率。企業の一年以上の債務状態を測る指標
ここでの固定長期適合率は、以下の計算式で算出されています。
固定長期適合率=非流動資産/(資本+非流動負債)
固定長期適合率は100%以下が望ましいとされます。したがって直近の95.15%は安全です。固定長期適合率も流動比率と同じように基準の数値に近い状態で推移しております。理由は同じくのれんにあります。
C/Fから読み解く電通 | キャッシュフローから垣間見える積極的な投資方針
営業キャッシュフローとは、企業が営業活動で生み出したお金
投資キャッシュフローとは、企業が投資に使ったお金、もしくは投資で得たお金の合計
財務キャッシュフローとは、企業が金融機関から借入した、あるいは返済したお金の合計
フリーキャッシュフローとは、企業が自由に使えるお金
ここではフリーキャッシュフローを以下の計算式で算出しています。なおフリーキャッシュフローの算出方法は分析の目的によって差異があります。
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
一般的に、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナス、フリーキャッシュフローがプラスの状態が健全な状態と言われています。電通の2018年12月期のC/Fを見ると、営業キャッシュフローはプラス、投資キャッシュフローはマイナス、財務キャッシュフローはプラス、フリーキャッシュフローはプラスです。これはM&Aなどを積極的な企業に見られるC/Fの状態です。C/Fからも電通のM&A戦略の結果が見受けられます。
まとめ

いかがだったでしょうか。数字でみると、電通は非常に儲けが良いビジネスを展開していることがわかりました。一方で、M&Aも積極的に行っています。財務データからアグレッシブな経営姿勢が伺えますね。より詳細な調査・分析が必要ですが、財部データを見た限りだと将来への期待が持てそうな内容です。各項目でより深く見ていくことで、皆様特有の問題意識や課題の発見ができると思います。