
三井物産 株式会社編 企業研究レポート
当レポートでは、損益計算書(以下P/L)、貸借対照表(以下B/S)、キャッシュフロー計算書(以下C/F)の数字を見ながら、三井物産株式会社を分析します。
目次
企業研究 | 三井物産株式会社
三井物産株式会社は、日本の総合商社です。
金属、機械・インフラ、化学品、エネルギー、生活産業、次世代・機能推進の6つの分野で事業を展開しています。
詳しくは『三井物産の事業』から確認できます。
本記事では、P/L、B/S、C/Fから三井物産株式会社をサクッと紹介します。
本記事で使用している財務データは以下の資料のものです。
- 三井物産株式会社2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 三井物産株式会社2018年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 三井物産株式会社平成29年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- 三井物産株式会社平成28年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
P/Lから読み解く三井物産|稼いでいるが…
ここでは、P/Lの数字から本業で稼ぐ力を見ていきます。
直近の収益は7兆円弱、営業利益は約2,722億円
2019年3月期は収益、売上総利益、営業利益ともに伸びています。
一年間で約7兆円の収益という数字は控え目に言っても素晴らしいです。
ビジネスマンなら誰しもがこの規模のビジネスの一員になりたいと思うでしょう。
しかし、約7兆円の収益に対して、売上総利益は約7907億円。
営業利益は2,722億円。
なかなか難しいビジネスであることも確かです。
儲かるとは言えない数字
売上総利益率は12.05%。
売上高営業利益率は3.91%。
どちらの数字も儲けを出すには相当な企業努力が必要であることを表しています。
他方で、既存の仕組み上でコストを削減するアイデアと実行力があるビジネスマンには最適な活躍場が用意されていると捉えることもできます。
B/Sから読み解く三井物産|企業としての安全性は良好
さて、次はB/Sの数字から三井物産の企業としての安全性を見てみましょう。
まずはB/Sの主要な数字を確認
それでは各数字を使って三井物産の企業としての安全性を見ていきましょう。
自己資本比率
自己資本比率とは総資本に対する自己資本の比率
ここでの自己資本比率は、以下の計算式で算出されています。
自己資本比率=親会社の所有者に帰属する持分合計/(資本+流動負債+非流動負債)
諸説ありますが30%から40%が安全である目安と言われています。
したがって、直近の自己資本比率35.69%は安全です。
流動比率
流動比率とは、流動負債に対する流動資産の比率。
企業の一年以内の債務返済能力を測る指標
ここでの流動比率は、以下の計算式で算出されています。
流動比率=流動資産/非流動資産*100
流動比率が100%を超えていれば安全と言われています。
したがって直近の145.84%は安全です。
ただ流動比率の推移を見ると直近2年で低下しています。
固定長期適合率
固定長期適合率とは、返済を必要としない資金に対する固定資産に使われている資金の比率。企業の一年以上の債務状態を測る指標
ここでの固定長期適合率は、以下の計算式で算出されています。
固定長期適合率=非流動資産/(資本+非流動負債)
固定長期適合率は100%以下が望ましいとされます。
したがって直近の86.36%は安全です。
一方で固定長期適合率も直近2年で上昇しています。
流動比率と同じく調べてみるのも良いでしょう。
C/Fから読み解く三井物産|フリーキャッシュフローはマイナスだが…
営業キャッシュフローとは、企業が営業活動で生み出したお金
投資キャッシュフローとは、企業が投資に使ったお金、もしくは投資で得たお金の合計
財務キャッシュフローとは、企業が金融機関から借入した、あるいは返済したお金の合計
フリーキャッシュフローとは、企業が自由に使えるお金
ここではフリーキャッシュフローを以下の計算式で算出しています。
なおフリーキャッシュフローの算出方法は分析の目的によって差異があります。
三井物産の2019年3月期のプレゼンテーション資料では、営業キャッシュフローから運転資金及び定期預金の増減額を除外したフリーキャッシュフローを使用しています。
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
一般的に、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナス、フリーキャッシュフローがプラスの状態が健全な状態と言われています。
三井物産の2019年3月期のC/Fを見ると、営業キャッシュフローはプラス、投資キャッシュフローはマイナス、財務キャッシュフローはプラス、フリーキャッシュフローはマイナスです。
これは事業に積極的に投資をしている段階で見られるC/Fの状態です。
先述の流動比率と固定長期適合率が上昇していることを含めて考えると辻褄が合うでしょう。
しかしながら、具体的にどの事業に投資しているのか。
その投資によって将来どれくらいの期間でどれくらいのキャッシュを回収することができるのかを入念に調べる必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
数字だけでみると、三井物産の収益性はやや魅力に欠けました。
一方で、安全性は良好です。
かつC/Fからは将来に向けて積極的に投資しているであろうと予測できます。
より詳細な調査・分析が必要ですが、サクッと見た限りだと将来への期待が持てる内容です。
各項目でより深く見ていくことで、皆様特有の問題意識や課題の発見ができると思います。
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