
本エントリでは、SCSKと日鉄ソリューションズ(以下: NSSOL)を比較する。
両社の比較を通じて、どちらの企業が財務データ的に良い状態であるかを明らかにする。
具体的には、以下の指標を比較する。
- ROAの比較
- 収益性指標の比較
- 資産効率性指標の比較
- 安全性指標の比較
- キャッシュ・フローの比較
目次
【ROA企業研究】 SCSK と 日鉄ソリューションズ
指標を比較する前に、SCSKとNSSOLの企業規模を確認する。
SCSKの2019年3月期売上高は358,654,000,000円。
NSSOLの2019年3月期売上高は265,278,000,000円。
SCSKの2019年3月期売上総利益は88,742,000,000円。
NSSOLの2019年3月期売上総利益は52,586,000,000円。
SCSKの2019年3月期営業利益は38,378,000,000円。
NSSOLの2019年3月期営業利益は25,676,000,000円。
SCSKの2019年3月期事業利益は39,439,000,000円。
NSSOLの2019年3月期事業利益は26,317,000,000円。
【ROAの比較】SCSKの方が良い数値
まずはSCSKとNSSOLのROAを見ていく。
ROA=事業利益÷総資本=売上高事業利益率×総資本回転率
事業利益=営業利益+営業外収益
ROA
SCSKの2019年3月期ROAは12.53%。
NSSOLの2019年3月期ROAは11.15%。
ROAは、SCSKの方が高い。
2018年3月期から逆転している。
では、ROAの内訳から、逆転した要因をみてみよう。
売上高事業利益率
SCSKの2019年3月期売上高事業利益率は11.00%。
NSSOLの2019年3月期売上高事業利益率は9.92%。
売上高事業利益率は、SCSKの方が高い。
総資本回転率
SCSKの2019年3月期総資本回転率は113.91%。
NSSOLの2019年3月期総資本回転率は112.37%。
総資本回転率は、SCSKの方が高い。
SCSKの総資本回転率は、2018年3月期に大きく改善している。
これによりSCSKのROAも改善された。
【収益性指標の比較】SCSKの方が良い。
ここでは、SCSKとNSSOLの収益を比較する。
具体的には、売上総利益、売上高営業利益率、売上高事業利益率を比較する。
売上総利益率
SCSKの2019年3月期売上総利益率は24.74%。
NSSOLの2019年3月期売上総利益率は19.82%。
売上総利益率はSCSKの方が高い。
売上高営業利益率
SCSKの2019年3月期売上高営業利益率は10.70%。
NSSOLの2019年3月期売上高営業利益率は9.68%。
売上高営業利益率も、SCSKの方が高い。
売上高事業利益率
SCSKの2019年3月期売上高事業利益率は11.00%。
NSSOLの2019年3月期売上高事業利益率は9.92%。
先述で見た通り、売上高事業利益率は、SCSKが高い。
収益性指標は、すべてSCSKが高い。
企業としての稼ぐ力はSCSKが強い。
【資産効率性指標の比較】両社同水準。資金運用効率はNSSOLの方が良い。
ここでは、SCSKとNSSOLの資産効率性指標を比較する。
総資本回転率
SCSKの2019年3月期総資本回転率は113.91%。
NSSOLの2019年3月期総資本回転率は112.37%。
先述で見た通り、総資本回転率は、SCSKの方が高い。
SCSKの総資本回転率は2018年3月期に大きく改善した。
固定資産回転率
SCSKの2019年3月期固定資産回転率は315.06%。
NSSOLの2019年3月期固定資産回転率は325.66%。
固定資産回転率は、NSSOLの方が高い。
この指標は、SCSKとNSSOLで同水準だ。
売上債権回転期間と買入債務回転期間
SCSKの2019年3月期売上債権回転期間は約76日。
SCSKの2019年3月期買入債務回転期間は約45日。
SCSKは代金の受け取りと、支払いに約21日間の差がある。
SCSKはこの21日間のための運転資金を有していなければならない。
NSSOLの2019年3月期売上債権回転期間(単位: 日)は約78日。
NSSOLの2019年3月期買入債務回転期間(単位: 日)は約72日。
NSSOLは、代金の受け取りと支払いの差が約6日間。
SCSKよりNSSOLの方が資金運用効率を高くできる構造を有している。
手元流動性比率
SCSKの2019年3月期手元流動性比率は約0.71倍。
NSSOLの2019年3月期手元流動性比率は約0.15倍。
SCSKは月商*0.71の現預金等を手元に残している。
一方、NSSOLは月商*0.15の現預金等を手元に残している。
資金運用効率の面ではNSSOLの方が効率が良い。
【安全性指標の比較】SCSKの方が良い。
ここでは、SCSKとNSSOLの安全性指標を比較する。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
SCSKの2019年3月期インタレスト・カバレッジ・レシオは約343倍。
NSSOLの2019年3月期インタレスト・カバレッジ・レシオは約2924倍。
インタレスト・カバレッジ・レシオは、NSSOLの方がよい数値だが、数値的には両社とも安全水準だ。
自己資本比率
SCSKの2019年3月期自己資本比率は62.15%。
NSSOLの2019年3月期自己資本比率は50.10%。
自己資本比率は、SCSKの方が良い数値だが、数値的には両社とも安全水準だ。
固定長期適合率
SCSKの2019年3月期固定長期適合率は46.74%。
NSSOLの2019年3月期固定長期適合率は59.66%。
固定長期適合率は、SCSKの方が良い数値だが、数値的には両社とも安全水準だ。
流動比率
SCSKの2019年3月期流動比率は277.16%。
NSSOLの2019年3月期流動比率は219.73%。
固定長期適合率は、SCSKの方が良い数値だが、数値的には両社とも安全水準だ。
当座比率
SCSKの2019年3月期当座比率は132.19%。
NSSOLの2019年3月期当座比率は85.39%。
当座比率は、SCSKの方が良い数値だ。
NSSOLの当座比率は望ましいとされる理論値を下回っている。
NSSOLの当座比率が理論値を下回っている理由は、先述の売上債権回転期間と買入債務回転期間が要因と考えられる。
NSSOLは代金の受け取りと支払いの時差が非常に小さい。
したがって、手元に現預金等を置いておくより、他に利用したほうが良いという経営判断と考えられる。
一方で、企業の安全性の側面から考えると、NSSOLは突発的な支払い力が弱いと考えることもできる。
【キャッシュ・フローの比較】両社とも良い状態。SCSKの方が将来的に明るい。
ここでは、SCSKとNSSOLのキャッシュ・フローの状態を比較する。
SCSKのキャッシュ・フロー
SCSKの2019年3月期営業活動によるキャッシュ・フローは33,511,000,000円。
投資活動によるキャッシュ・フローは-7,163,000,000円。
財務活動によるキャッシュ・フローは-19,995,000,000円。
フリー・キャッシュ・フローは26,348,000,000円。
総じて素晴らしいCFの状態だ。
営業活動でしっかりキャッシュを稼ぎ、投資活動、財務活動にキャッシュを回せている。
企業経営が良好に循環している。
NSSOLのキャッシュ・フロー
NSSOLの2019年3月期営業活動によるキャッシュ・フローは19,690,000,000円。
投資活動によるキャッシュ・フローは-1,624,000,000円。
財務活動によるキャッシュ・フローは-16,255,000,000円。
フリー・キャッシュ・フローは18,066,000,000円。
NSSOLのCFも非常に良い状態だ。
営業活動でキャッシュを稼ぎ、投資や財務活動に充てている。
ただ、営業活動によるキャッシュ・フローに対して、財務活動によるキャッシュフローの割合が大きいと見ることもできる。
つまり、良い投資先が見つからないため、キャッシュを投資家に還元している。
将来的には現状維持、あるいはやや下降気味になる可能性が高い。
【まとめ】
本エントリでは、SCSKとNSSOLを比較した。
両社を比較した結果、SCSKの方が財務データ的に良い状態である。
また、将来的により成長が見込めそうなのはSCSKだと考えられる。
まずSCSKの方が企業規模が大きい。
かつ収益性、安全性もSCSKの方が良い。
資産効率性については両社同水準だが、総資本回転率はSCSKがNSSOLを上回っている。
最大の決め手は、キャッシュ・フローだ。
両社ともCFの状態は良好だ。
しかし、NSSOLのキャッシュ・フローの推移からは、将来への投資より、投資家への還元に力を入れているとみられる。
一方、SCSKは2018年3月期に大きな投資を行っている。
つまり、SCSKは成長できる領域を認識し、そこに資金を投じている。
したがって、将来的により成長が見込めそうなのはSCSKだと考えられる。